インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国 〜緻密な職人芸と構造の力〜


インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの王国

「インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの王国」の先行オールナイトにいってきた。
豊洲ユナイテッドシネマで視聴したのだが劇場は同シネコンでは一番スクリーンの大きい10番スクリーンでの上映であった。
席は40%くらいが埋まっていた。
盛況である。

「インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの王国」の舞台は1957年。前作の「インディ・ジョーンズ最後の聖戦」から19年後の設定である。

本作の舞台は大きくわけて4つである。

・米軍の軍事施設(エリア51)での寸劇。(といってもかなり大掛かりだが)

・インディアナ・ジョーンズ(インディ・ジョーンズ)が教鞭をとるシカゴ大学と大学街。

・ナスカでの探索

・アマゾンでの活劇

最初のエリア51での寸劇はイントロダクションなので大きくは「シカゴ」「ナスカ」「アマゾン」の3つがメインの舞台となっている。

全体を通して「きっちりとした構成」であり「映画の教科書」という印象を受けた。前作までのスタイルを踏襲した「コミック調」の映像が安心感をつくりだしている。ただ人によっては「ふざけた映画」という印象を受けるかもしれない。

視聴した劇場の施設が最新のものであったことも一因だと思うがひとつひとつの映像をあそこまできっちりとつくりこまれると知らないうちに映像世界に引き込まれる。

総評として「きっちりした映画」である。僕が好みとする「ディストーション感覚」はそこには存在しない。それでも僕はこの映画を評価する。理由は二つだ。

一つはきわめてオーソドックスなつくりによって「万人受けするエンターテイメント」をつくりだしていること。簡単なようにみえてこれは相当に難しい。

多くのハリウッド映画同様、「インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの王国」も「構造の力」を使っている。

冒頭のイントロダクションを含む、3幕構成。(飛行機の移動シーンがポイントの切り替えになっているのでわかりやすい)
課題(拘束)→解決(脱出)の反復。
サブストーリーとしての恋愛。

映画の教科書に載っている「構造」によってパーフェクトなバランスで映画全体が構成されている。

そのため一見すると「普通の映画」に見えてしまう。が、その背景で行われている緻密な作業は想像を絶する。たとえばアクションシーンのカット割りひとつとっても異様に手が込んでいる。そのため本作のカット割りを全く同じ状態で素人の役者が演じてもそれなりに見られる映像をつくることができるはずだ。
視聴した方は

「え、そんなにスゴかった?」

と思われるかもしれないが映像を「観る」と「つくる」の間には天と地ほどの違いがある。

本作に関しては僕はストーリーがどうこう、リアリティがどうということには興味がわかない。そこではなく「職人芸」とでもいうべき

「緻密さ」

に恐れ入った。とにかく

「こまかいところまで手を抜かずに」

につくっているのがわかる。冒頭の寸劇で剣がでてくるシーンがある。この剣の登場シーンのカット割りがとにかくすごく良かった。

冷静に考えれば違和感があってもいいのだがこのシーンでの剣の登場は全く不自然さを感じさせない。それでいて剣という「キャラ」の存在は強く印象づけられている。このシーンがあることで後半場面での剣によるアクションシーンが引き立っている。

全体を通してパっと見は「8時だよ全員集合」の前半の寸劇の連続のような印象を受ける。しかし、どの映像もバカげたくらいに手間ひまがかかっている。

インディ・ジョーンズシリーズは「物語の基本構造」にそってつくられているためその構造をまねることは難しくない。(確か旧作は新春隠し芸大会のパロディにつかわれていたこともあった)

しかし問題はその先である。

「構造」を常識離れした「職人芸」によってエンターテイメントに仕上げていくことは尋常ではない困難さをともなう。シカゴでのカーチェイスにしてもあのコミック的なノリを実写で実現しようとすれば膨大な予算と時間を必要とする。

映画を観終えての帰り道。
やっぱり黒澤映画に似ているなあ、と感じた。
黒澤映画も基本的に「構造の力」によって構成されている。例えば最近リメイクされた「用心棒」や「隠し砦の三悪人」など物語の構造だけみるとオーソドックスなつくりである。それをエンターテイメントに仕上げているのは「職人芸」的な緻密な作業である。

普通に視聴すると

「いやー、おもしろかった」

で終わってしまうが「面白さ」の細部について考察していくと映像の背後にある緻密さに愕然とする。ひとつひとつの映像が時間軸の中で相互に影響しあって「わかりやすい面白さ」をつくりだしている。

観る側がわかりやすいと感じる映像ほどつくる側の労力が圧縮されている。およそ息の長い映画というのはほとんどこのような「職人芸」によって成立している、というのが僕の考えである。

最後に本作「インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの王国」を観ていて往年のジェームス・スチュワートが主演したハリウッドの名作群を思いだした。

ストーリーもテンポも全然違うが「スミス都へ行く」や「我が家の楽園」のモードが重なってみえたのもおそらく二者に共通する「構造の力」によるものだろう。


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