朝の明治神宮の風と太陽と人の音

朝の明治神宮を歩いた。

午前六時過ぎ。日比谷から千代田線で神宮前までいき、地上にあがる。
冷たい空気が気持ち良い。

日曜の昼は人でごった返す駅前には人影がまばらだ。
橋を超えてすぐのところにある鳥居の前では作業車が掃除の準備をしていた。

※上記の写真のちょうど真ん中あたりに小さく白い点が見える。今朝はこの月を目指してみることにした。家を出た時は浅草の浅草寺か鎌倉の海岸にいこうと思っていた。けれど月島駅から電車に乗るのが何となく嫌で信号で振り返ると月が見えた。月の方向には明治神宮があった。

薄いピンクのTシャツを着た散歩の青年がザクザクと砂利を踏み鳴らし鳥居の真ん中を抜けていった。

鳥居の中央は神の通り道で我々は鳥居の柱の所を通らなければならないんだよ、とだいぶ前に友人が教えてくれた。
普段は一礼して右の柱から鳥居をくぐるのだがTシャツの男性の気配が残っている感じがして左の柱の方から参道に入った。

参道に入るとひんやりとした風が静かに森の気を運んでくる。朝の参道の気は心地よく、目を閉じてしばらく歩いた。

左斜め上の方にぼんやりと揺れを感じる。
伊勢神宮の時よりも緩やかだ。

最初にこの種の感覚があったのは沖縄であった。
10年以上前のことだ。
はじめて訪れた時、ひとりで本島をまわった。

南部という名前にひかれ島の下の方角を目指した。
海沿いの道は眺めがよく、ブルーの海がよく見えた。

どのくらい走っていただろう。
近くに世界遺産があることがわかった。

カーナビの表示をみると「知念」という地名であった。

その後、幾度も訪れることになるその場所は「斎場御嶽」という本当最大の聖地であった。
前日、沖縄に引っ越したばかりの友人が「うたき」という名称は「祈りの場」のようなものだと教えてくれた。

いまでは舗装され、駐車場も整備され観光地化している斎場御嶽だが、僕が最初に訪れた頃は車が交差できないくらい細い道路をおっかなびっくり進まなければならなかった。
道路の突き当たりには原っぱに砂利をまいてロープを張ったような駐車場があった。
車を止め、参道へと向かった。

駐車場の近くには掘っ立て小屋があり、ガイドらしき老人が談笑していた。
当時は手すりもなくむき出しの石だたみだった参道もいまではすっかり整備され、綺麗になっている。

この時の話は長くなるので場を改めて詳しくレポートしたい。

今は明治神宮について続ける。

参道を進むと時折、においの異なるそよ風が顔の近くを通り抜けていく。
行き交う人はまばらだ。

ウォーキングなのだろうか足早で歩いていく。
彼らの足音はそよ風や葉音とは異なるリズムだ。
存在が周囲から分離されているかのようである。

長い参道を左に曲がると大鳥居がある。

鳥居の前の方から男性グループが歩いてくる。
飲み明かした後なのだろう。
表情は明るいが目線が泳いでいる。
彼らは鳥居の中央を歩いていった。

そのまま200メートルほど進むと道は右に折れ、本殿が見えてくる。
その手前には御苑北門があり、門の前で開門を待つ若者が数名座り込んでいた。

彼らを横目に参道を右に曲がり、本殿の手前100メートルくらいまで来たとき、それまでとは違った不思議な香りを含んだ風が通り過ぎた。
酒のような淡い香りが鼻孔に広がった。

本殿の入り口では若い神職見習いらしき青年達が境内を掃除していた。
歩いていくと彼らのひとりが

「おはようございます」

と綺麗な声で挨拶をしてくれた。

本殿への門のところで半ズボンをはいたスーツ姿の子供を抱えた家族とすれ違った。
静かな境内を抜け、本殿への参拝をすませてから右の角にあるベンチに座った。

門のところにあるベンチではジャージ姿のおじさんが一生懸命ストレッチをしている。

空と境内を眺めながらお茶を飲んだ。
青く静かな空だった。

ストレッチをしていたおじさんはいつの間にかいなくなっていた。
本殿の方から境内に響くくらい大きな拍手が聞こえた。
少しづつ参拝客が増えてきたようだ。

本殿の左側にある門を出て、西参道に向かって歩き出した。
原宿側から本殿に向かう場合は南参道を使うが参宮橋側から参拝する場合はこちらの西参道を使う。

西参道をしばらく歩いていくとウォーキングのカップルが後ろから追い越していった。
彼らの足音には微妙なズレがあった。

西参道の右手には北池と宝物殿がある。
宝物殿の前には芝生が広がっている。そういえば、以前、坂本さんがイベントをやった場所だ。

太陽の光で広場の緑が輝いていた。

少し冷たい空気と陽気が入り交じり、心地よさに身体を動かさずにはいられなくなったのだろう。
5人くらいのグループできていた若者達がラジオ体操をはじめた。

その対角線側、ちょうど武道場の右前あたりの森の前あたりでスキンヘッドのおじさんが気功の型らしき演舞を続けていた。
宝物殿の前では20人くらいのサークルが太極拳の練習をしている。

森の上には太陽が見えた。

陽光は広場をおだやかに満たしていった。
帰宅してiPhoneから写真をMacに取り込むと太陽は本来の大きさよりも10倍くらいの大きさで輝いていた。

日曜の朝の時間がゆっくりと流れていった。
帰宅して久しぶりにブログを更新した。