「チャイルド44(トム・ロブ スミス)」 立ち読みして衝動買いをした小説は久しぶりである、この小説には「人」が棲んでいる


チャイルド44 上巻 (新潮文庫)


チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

書店に「このミステリーがすごい」などミステリー系のブックガイドが並ぶ時期である。
10日くらい前に有楽町の三省堂をぶらついていたらブックガイドオススメ本コーナーがあって、ぱらぱらと立ち読みすると最初の1ページからバツグンに面白い一冊があった。

それが上記の「チャイルド44」である。
舞台はロシアだ。

読めばわかるがとにかく「寒さ」がリアルである。
特に導入部が秀逸で最初からトップギアで脳内に映像世界が広がっていった。

僕がパラパラ眺めたブックガイドでは4位くらいにランクされていたがざっと6冊くらいを立ち読みしたところダントツに面白そうだったので購入し一気に読んでしまった。

昨日、オアゾに寄ると「このミステリーがすごい」の本年度版が出ていたのでチェックするとなんと1位は「チャイルド44」であった。自分がエライわけでもほめられたわけでもないがわがことのような嬉しさを感じた。

内容についてはブックレビュー系のサイトに譲るとして、自分がどこに惹かれたのかを読後10日を経て考察してみるとおそらく自分は「キャラ」に惹かれていたのではないかと思う。

主人公の「レオ」のキャラ設定と存在が極めて文学的な印象を受けた。
彼は無敵のヒーローではない。
しかし、弱いわけでもない。

悩むし完全な正義の味方でもないがその本質的な部分に「人」がいる。
この「人」に僕はひかれたのだと思う。
彼だけではなく様々なキャラに「人」が見え隠れする。
そしてそれらの「人」は単純ではなく状況によってパーソナリティが変動する。
こうした揺らいだ感じがもともとはつくりものである小説という架空物語に「リアル」を感じさせる要因になっているのではないかと僕は考える。

というわけで単なるミステリー以上の存在感をもった素晴らしい作品であった。
今年の最後に読んだ小説だが文句なしに面白かった。

次はがんばって「ゴールデンスランバー」にトライしてみるつもりだ。