日本一のゴマすり男
「これは天才か狂気の主による仕事に違いない」
と唸らせられたセリフがあったのでご紹介したい。
植木の役名は中等(なかひとし)。
自動車販売店の新入社員という設定である。
彼が浜美枝が演じるフリーの営業ウーマンに袖にされ自宅で回想しながら憤慨しながらこんな台詞をいう。
「名前は中等(ちゅうとう)でも頭の方は高等に出来てんだ!」
このセリフには吹き出してしまった。
普通に生きていてこんな言葉を思いつくものだろうか。
考えてつくりだすのは相当に困難な日本語だと思った。
これを植木が踊りながら口にすると不思議と嫌みがなく自然体でそれが逆に面白さをドライブさせている。
次はこれ。
クラブのシーンで女性にゴマをするシーン。
「魅力に衣をつけてフライにしたようなもんですヨ」
このセンスには脱帽である、いったい誰が脚本を描いているのだ??
そして続けざまに
「じゃ、チャーミングフライに乾杯」
全編がこのセンスで展開されていく。
映画としては「日本無責任野郎」の方が完成度が高いように思うが言葉に注目すると「日本一のゴマすり男」の加速感は尋常ではない。
異世界の言語体系と遭遇したかような軽いめまいを覚えた。
台詞によってこれだけの存在感を与える俳優がいたとは驚きである。
ちなみに植木等、劇中の設定は25歳である。
しかしひいき目にみても32歳くらいにしか見えない。
この映画には学生役で加藤茶が出演している。
脚本は笠原良三(ささはらりょうぞう)氏であった。
この投稿へのコメント