月島の兄貴分と久しぶりに再会
日曜日の夜半過ぎ、姿勢が悪かったのだろう身体がガチガチで思考する気力もなかった。
こういう時は身体を温めるのが一番だ。
23時30分過ぎ、閉店直前の月島温泉に向かった。
日曜の閉店間際だというのに月島温泉は思ったよりも賑わっていた。
最近はどこの銭湯ではバスタオルを貸してくれるので手ぶらが便利だ。
手桶にお湯をくみ、さっと身体を流して湯船に浸かろうとすると
「オイ!」
と声がした。銭湯で知り合いに会うことはまずないのでそのまま湯船に入ろうとすると男性が
「オイ!オレだよ」
とこちらに向かってきた。
自分が月島の兄貴と慕っていたユキオさんであった。
もう15年来の付き合いになるだおろうか。
月島に来た頃は湘南から通っていたのでよくユキオさんの家に泊めてもらった。
ユキオさんは月島で「八角」という店をやっている。
酒の師匠である新井さんとユキオさんの店にいったのがきっかけで仲良くなり、以後、いろいろとお世話になった。
ユキオさんは月島にもう一軒の家を持っていたのでそこを借りる予定だったのだが諸所の事情で別な物件に住むことになった。
それもあって以前ほど頻繁には会わなくなっていったのだがそれでも時々会うと立ち話をする。
今日は久しぶりにそのユキオさんと風呂で再会したわけだ。
「調子はどうなんだ?」
ときかれたので
「調子はいいんだけれど、この間の震災で大変だよ」
「ん?なんかあったのか。」
「実家がさ、福島の南相馬なんだよ。地震と津波はなんとか大丈夫だったんだけれど今回の原発が問題で」
「そうか。そいつは大変だな。そういえばオレらこの間、福島に物資を届けにいってきたぞ。毛布200枚と水1000リットル持って、いってきた。しかし、役人は本当にダメだな。届けられた物資を雨ざらしにしてやがる。それで、オラら直接届けるから避難所教えろ、といったらルールだからダメだ。とかいうんだ。ふざけんじゃねえ、つって、後で捕まえも何でもしやがれっていってふっきていってきちゃったよ。」
「そいつはありがとう。いってくれたんだね。ありがとう」
「なんかよ。テレビみててももうだめなんだよな。ムシャクシャしちゃってさ。そんで仲間つれていってきちゃった。元気にしてるようだから安心したけど、なんかあったら寄れよ。いつでも相談のるからな。じゃお先。」
そういってユキオさんは去っていった。
相変わらずの江戸っこなノリである。
予想していなかった兄貴分との再会がなんとも温かい今夜の月島温泉であった。