フランスで過去に放送されたテレビ・ラジオ全ての番組が無料公開された件と花ビジネスとコンテンツビジネスの類似について
キリンの花ビジネスの特集をみた。
キリンが世界でも大手の花の種苗メーカーであることをはじめてしった。
番組の舞台は中国。
中国は巨大な花の生産地である。1〜2億といわれる中国の富裕層が「花」の購買層である。
キリンはカーネーションの苗で中国市場の8割を持つ。品種名は「マスター」。
ところがこの花が無断にコピーされており、市場に出回っているキリンの「マスター」を苗としたカーネーションの50%
が違法コピー商品なのだそうである。
花にもコピーという概念があることに驚いたが容易に違法コピー可能なことにもっと驚いた。
この問題はデジタルコンテンツについて何かやろうとするとかならずついて回る問題でもある。
花のコピー問題は番組最後で綺麗な大団円な終わり方をしていた。
ベースになっている花の違法コピーを繰り返すと世代を重ねるにつれ劣化が生じてしまい、商品価値が下がってしまうのである。
このあたりは新手のDRMのようなものである。
面白かったのはキリンの対違法コピー戦略である。種苗の開発においてDRM的な対策を盛り込むということもやるだろうけれど、
普通に考えれば、まずは花の違法コピー最大手の業者を法律的に封じ込める、ということをやりそうなのだが。現地の社長は…
「大規模にやったら劣化は加速していくし、輸出用には使えないのだから(違法コピー花は対日本用の輸出には使えない)、
だったらキリンと代理店契約を結んで更に大きくしてはどうですか?」
と最終的には最大手の違法コピー花業者を自陣に取り込んでしまったのである。この解決方法は面白かった。
コンテンツのコピー問題を考えるうえで示唆的だと感じた。
同時刻、ネットでは別のコンテンツをみていた。たけくま先生の「たけくまメモ」である。先生のエントリーによれば、
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_5c98.html
フランスの国立視覚研究所INAが、過去にフランスで制作されたテレビ・ラジオ番組10万本のネット公開を開始して、
世界に衝撃を与えております(全体の80%は無料視聴可能)
というのだ。
詳しくはたけくま先生のエントリーを参照してもらいたいが日本の現状と比べると隔世の感がある。
先生が上記の最後の方で書かれているコピーとコンテンツに対する見解はコンテンツに関わる人全てに参考になると思うので少し長めだが引用しておきたい。
マンガの世界で、オープンソース的なものは何かと考えると、コミケによくある二次創作ってのがあります。別に作者が
「好きに二次創作してください」と言っているわけではなくて、ファンが勝手にやってるわけですが。パロディややおいだけではなく、
まじめな二次創作というのもありまして、中には原作よりよくできているのがありますよ。著作権的には真っ黒か、グレーな存在なんですが、
そういうものを含めて「マンガ界」が成立していることは事実なんですよ。ある種の「お目こぼし」
というか、きわどいバランスのうえにある表現であることは確かなんですが。ただまあ、コミケの同人誌だって金をとっている限りは「商業誌」なわけで、別にフリーウェアでも、オープンソースでもない。
ましてや、マンガやアニメやゲームで食べている人にとっては、ソフトがタダになることは死活問題だと思われるのも仕方がない話です。でも、世の中にはタダのソフトというのもあって、良い例が民放テレビでしょう。全部をCM収入でまかなうという。あれ考えた人、
天才だよね。もちろん広告主義の弊害はあるわけだけど、番組をタダで見せようとすれば、現状、広告以上の方法はないわけです。で、俺が考えたのは、たとえばすべてのソフトはタダにしてしまって、
ソフトで飯を食べたい人は、
いちいち広告載せたらどうかということ。映像ソフトであれば、15〜30秒くらいのCMが必ず入るわけです。それで、これが肝心なのだけど、
広告が入る限りは、コピー自由、再配布自由とする。スポンサーからすれば、コピーされればされるほど掲載媒体が勝手に増えるわけだから、
嬉しいではないですか。それで、広告はずしたら途端に映像が再生不能になるようなプロテクトをかければ、イヤでも広告をつけざるをえないでしょう。
それでもハッカーみたいな人がプロテクト外すでしょうけど、その場合だけ、見つけ次第厳罰に処す、とやればいいのではないか。
ヤフーのトップに実名載せるとかですね。もし可能なら、コピーされるたびにスポンサーに通知されれば、コピー回数に応じて広告料が増える、
なんてシステムもいいかもしれない。でもこれは一種のスパイウェアになるから、いやがる人もいるだろうな。で、どうしても広告抜きで再生したい、という人のみ、有料登録して視聴するわけですよ。あと、「俺は広告に縛られるのはごめんだ」
という作者の人は、別に有料配布するなり、パッケージにして売るなり、自分で勝手にやればいいでしょう。それから、
ソフト代を「税金」
でまかなうという方法はどうだろうか。要するに、ソフトで金をもうけたい人は、文化庁なり、公共団体なりが管理するサーバーに登録して作品をアップするわけです。
ダウンロードそのものはタダ。それで、ダウンロード回数におうじて税金から著作権料が支払われる、というのはどうでしょうか。税金は、たとえばプロバイダなどの回線業者から一律に徴収する。多少回線料金が上乗せされるけれども、
ソフトが合法的にタダとなるなら、納得する人も多いのではないかと。まあ、こうした問題は頭のいい人がさんざん議論しているでしょうし、
俺も思いつきを書いているだけなのでこれが決定的な方法だと言うつもりもありません。もっといいアイデアや議論があれば、
お教え願いたいのであります。結局、俺が見る限り、違法コピーの問題はなくならないし、ネットの進化がそれを助長することも止められない。ならば、
ソフトで食べているあらゆる業界はこのことを真剣に考えて、「コピーを許容しつつ利益が上げられる」
方向で対策しないと、いずれ時代の波に取り残されるよ、というのは確かだと思うわけです。
いかがだろう。国費でまかなってしまうと露出面、つまり視聴機会の意図的な増加などにより、政治的な思惑や、
ロビー活動のようなバイアスがかかってしまう可能性があるので仕掛けは必要だと思うが構造的にはこうした「プール」はありだと思うのである。
おそらく人とは別のシステムが介在することでこの部分は解決できるのではないだろうか。
この世に存在する全ての情報に対して価値化のチャンネル(例えば換金可能性)を提示すること。これは僕のやりたいこのでもあるのである。
この投稿へのコメント
>この世に存在する全ての情報に対して価値化のチャンネル(例えば換金可能性)を提示すること。これは僕のやりたいこのでもあるのである
この締め、いい話だ!
クリエイティブ・コモンズとかむつかしいことはよくわからないのですが、ソフトは換金不可能な価値のものじゃないというのは常々わたしも思ってることなので。金になりゃいいって問題でもないし。
先週会った人がこのまえ中国に行っていて(Mac OS Xのサーバの仕事かな?)、今年あたりから、中国もとうとうOSやソフトにお金を払う国に確実になる、って言ってました。これも国家単位の契約だからこそ実行できるそうで、、、いやいやデジタル界にでっかい開拓市場ができるってことでこちらもすごいと思いました。
中国の話面白いですね〜。
情報って言い方だと広すぎるので例えば画面上にあるこうしたコメントとかテキストとかにしても価値はゼロではないし、固定されてなく、どちらかというと変動的で。
誰にでも同じテキストでもそのタイミングにこれがくると情報価値が10000倍みたいなことってあって、そういうのができやすい環境ってありだと思うんですよね。
そういう環境だともっと楽しいよなあ、と。