「パイレーツオブカリビアン2 デッドマンズ・チェスト」 後半のクラーケンバトルは必見である


“パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト スペシャル・エディション” (ゴア・ヴァービンスキー)

おくればせながらようやく昨年のスーパーヒット作「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」を観た。この作品、全世界で1000億円以上の興業収益を記録している。タイタニックとロードオブザリングに続いて歴代第三位とのことである。規模が尋常ではない。衝撃である。20〜30億のボックスオフィス成績で「大ヒット御礼!」「邦画バブルか?!」とやってる日本って何なのだろう(「踊る大捜査線2」の173億という数値もスゴいが。他の映画がこれに負けているという現実がかなり恐い。いやそれより恐いことにゲド戦記に勝ってる映画ってこの25年くらいで10本くらいしかないのである)

そりゃ20億とか30億とか個人からみれば巨大な数字だけれど、産業としてみればちんまりとしたものである。直感的に思うけれど作品としての映画の差異以前に産業システムの根本部分に大きな違いがあるとしか思えない。「ゆれる」は本当にいい映画だったけれどあれだけの映画を撮った西川美和監督にしても映画だけを撮って生活できてるわけじゃない、ときいた。別にその環境が悪いとは言わないけれど何かが違うんじゃないかと思うのである。

ハリウッドな映画に対しては批判もたくさんある。しかし、こうした作品によってマーケットが拡大し、全体での規模や資金が潤沢化していくからこそ亜流な作品や良質な作品を生み出す原資が循環しているのではないだろうか。

そうそう作品について感想を書いておこう。
自分はこのシリーズに共通するギャグ調の寸劇が苦手である。
それもあって前作ではいまいち入り込めなかった。(だからずっと観ないでいた)

今回も序盤からマンガ調の寸劇が展開される。しかしまあよくやるものだ。冗長的で嫌だなあ、と思っていたら、とんでもないアクションに転調していく。なんてことないシーンをあそこまでつくりこんでいくのは並大抵の信念ではない。頭が下がる。

終盤のクラーケンとのバトルは「アホか?!」と思わず叫んでしまった。よくまああれをつくろうと思ったものである。方向を変えたら超シリアス・スペクタクルな冒険モノにだって仕上げられると思うのだがそれをああいう形に崩して、ダーク・ディズニーなテイストに仕上げていくのはオレには逆立ちしてもできない。あの方向に持って行かせたプロデューサ氏はスゴイ。

あれだけ危ない橋を渡ってこれだけの結果を残していることは本当にスゴイと思う。
いい映画をつくれる監督やプロデューサやチームはいくつも思いつくけれどあのラインで制作して爆発的にヒットさせるのは誰にでもできることではない。スゴイハート(心臓)である。通常なら途中で守りに入るだろ普通。よくやったよなあ、それしか言葉が出ない。あのバジェットであの方向性とテイストでやりつづけつくりあげてしまいブランドコントロールしてしまうあの信念はホントにスゴイよ。
対抗できるのは全開の頃の角川春樹氏くらいしか思いつかない。

話は変わるけど角川春樹氏の自伝はUFO目撃の話からはじまる衝撃作である。

だってこれですよ!?!?
表紙で甲冑姿の著者なんてみたことない。
こんな人いないよなあ。必読とはいわないが俄人生ここにありを地でいく人だ。尋常ではない額の資産だったのにいきなり日陰の7畳くらいの部屋人生に転落してそこからまた「大和」つくってって。こんな面白い人そうそういないのではないだろうか。オレはスゴイ会いたい。会って例の地震を念力で止めた件について深く聞きたい。映画は面白いとか面白くないを越えて脳内麻薬(いや本物だったんだが)&アドレナリンドラ川春樹映画」になってるのが多いけど。(そういえばJSAなど、なんか感じが角川春樹映画に似てるのである。まるっきり余談ですが)

マトリックスのドキュメントでもウォシャウスキー兄弟の心臓の強さには感心しっぱなしだったが、デッドマンズ・チェストの場合はあの内容であそこにもっていく勝負強さに脱帽である。繰り返しになるが終盤のクラーケン戦はほとんど漫画である。ゲームである。面白さの質が完全に転調している。いやー、スゴイ製品である。収益構造、システム、産業への展開などなどなど、非常にインスパイヤされた。

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