「バットマン ダークナイト」 結論:この映画は本気である


結論から言おう。

「この映画は本気である」

それが視聴後に僕が感じた全てである。
これほどまでに強烈な映画体験を与えられるとは思いもよらなかった。

バットマンシリーズはティムバートンの重苦しい笑いのリズムとジャック・ニコルソンのジョーカーにどうしてもなじめず、2作目以降はみるのをやめてしまっていた。

しかし、監督がクリストファー・ノーランに変わった5作目からは雰囲気がガラりと変わり、割と好みの映像になっていたので今回も観ることにした。

TVCMやネットで公開されている予告編をみる限り、相変わらずジョーカーはリアリティがなく、どうになじめなかったがとにかく観ておきたいと思ったので豊洲ユナイテッドシネマの先行上映を観に行った。

オープニングから度肝を抜かれた、凄まじい映像のクオリティである。
リズムも良い。
ティム・バートン版とは全く違う。
一瞬でその世界に引き込まれた。

序盤からものすごいアクションシーンの連続である。
おそらくCGも多用されていると思うのだが全く違和感がなくCGと実写の切れ目がわからない。

映像のパワーも凄まじいのだが特筆すべきは脚本である。
とにかくこれでもかというくらいにストーリーがうねりまくる。
全く飽きさせない。
ストーリーの波状攻撃である。
見終わったときは通常の映画を3〜4本観たくらいの充足感を感じた。

これほどまでに重厚な映画をこれまで体験したことはない。
希有な映画体験である。

どういうことか?
詳しく説明しよう。

ストーリーが練りに練られており、主要登場人物がそれぞれにドラマを所有し、おのおのを主人公としても十分に映画が成立してしまうほどキャラ設定と描き方が完璧である。そして、驚いたことにこれらの登場人物がしっかりと主役としてドラマを演じる。これには参った。どのシーンをとっても無駄がなく、ストーリーが書き込まれており、とにかく完成度が高い。

更に、様々な仕掛けでドラマは次々とクライマックスが連続する。
終盤にさしかかる頃には

「オイオイ、まさかこの映画、まだこのテンションで続けるのか?それって、マジ?ホント、そこまでやってくれるのウウソ?!」

と終わらないドラマに驚喜した。

そう、クライマックスは次のクライマックスの序章であり、いつまでも最高の時間が終わらないのである。
これにはやられた。最後に3つくらいクライマックス級のストーリーが続くのだがこの波状攻撃は本当にスゴくて、

「エーそこまでしてくれるの????」

とエンターテイメントの世界の底力のスゴさをみせられた気分であった。
「バットマン ダークナイト」はお得とかお得じゃないとか面白いとかつまらないという気持ちを超えていた。

じゃあ、この映画はなんなのか?

それを考えた時に僕の中に浮かんだのは

「本気」

という言葉であった。とにかく映画を構成する全て、あらゆるシーン、あらゆる音、あらゆる演技、あらゆる映像。
それらが本気なのである。

CMにも出てくるがトレーラーがひっくり返るシーン。
あのシーンは凄まじすぎて声もでなかった。
どうやって撮影しているのか検討もつかない。

それなりに映画を観ている方だと思うがこんな体験は希有である。
これをなんと伝えていいのかまだ適切な言葉が見つからないがこれほどまでの映画力をみせつけられたのははじめてである。

ショックを超えている。

作家性、作品性によって心や脳を揺さぶられる経験はあったがエンターテイメントを主軸においた映画作品によってこ
こまでショックを与えらるとは想像もしなかった。

僕がこれまで観てきたエンターテイメントの中で文句なしにトップの作品である。
本当にここまでやるんだ、あの人たちは。

人の世界の可能性や未来を信じてもいいのかもしれない、と思った。

いい映画はたくさんみてきた。
けれどそのどれとも違ってエンターテイメントの王道を貫いて、それでもここまで脳に迫ってくる映画が開発できるのだということに僕はショックを隠せない。

「本気」は世界を動かすかもしれない。
「本気」はエンターテイメント作品でも脳をゆさぶってくる。

おそらく僕が感じたショックの正体は映像の向こう側にいる、人間の思考のエネルギーだ。
それが作品としての映像や音や全ての要素を通じて、ストーリーや作品性を超えて伝わってきて、僕の脳をゆさぶったのだ。

とにかく強烈な体験であった。
僕は観ているだけなのにそこに参加していた感じさえする。
このような体験ができたことに本当に感謝したい。

ありがとう。

エンターテイメントの未来を観た気がする。

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